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(クラッシュと見知らぬロボット)
(続き物です。)
>この前#1#2













少女と別れたクラッシュは烈火のごとく怒っているであろうフラッシュの元へ戻った


研究所の前で苛立だしげに腕を組むフラッシュを見て気は引けたが足を進める





「ただいま。」

「…………はやく仕事終わらせて帰んぞ」

「?」



てっきり罵詈雑言により迎えられると思っていたクラッシュは拍子抜けする




きっときみのこと心配してるんだよ! 






少女が言っていたことを思い出し、フラッシュに対し申し訳なさが込み上げてくる



「ごめん」

「ったく……。今度から一声かけろよ。」



しょぼくれるクラッシュのメットをポンポンと叩きフラッシュはばつの悪そうな顔を浮かべる
素直すぎるクラッシュに対しこれ以上は怒れないからだ



「とっととコイツを壊して帰んぞ。さっきからメタルからの通信がうざい」

過保護な長兄からのどうした?大丈夫か?何があった?と頻繁に入る通信に適当にごまかし続けてきたのだろう
フラッシュはげんなりしていた



「フラッシュ、帰ろ」

「あ?壊さねぇのか?!」


いつも嬉々として建物を破壊する兄機の意外な言葉にフラッシュは驚いた
どこかにエラーでも発生したのかとすら思ったが、クラッシュの様子は正常なように見える




「おれ、腹減った。帰って飯食いたい。」

「…まぁお前がいいなら俺は構わないけどよ。あ、メタルに通信入れとけよ!おまえから通信入れとけば俺が怒られなくてすむかもしれねぇし」







フラッシュと共に戻ると心配し過ぎて涙目になったメタルが抱きついてきた

そんなメタルをフラッシュは心底ウザそうに、クラッシュは若干引き気味に受け入れた


クラッシュにまで引かれるなんてほんとメタルはすごいねぇ


とのんびりとバブルが呟いた











その後もクラッシュは任務が無い日は少女の待つ研究所に向かった

そのたびに少女は喜び、二人でたくさんのことを話した




クラッシュが兄弟のことを話した時、少女は懐かしそうに微笑んでいた


少女にも弟にあたるロボットがいたらしい
彼女よりも先に壊れてしまった弟を語る彼女の目はとても優しかった




少女に名前を尋ねられたこともあった

しかしクラッシュは曖昧に誤魔化すことしか出来なかった

彼女が自分を工業用だと思っているならそれでいいと思った
彼女は野菜を刻む感触や優しい歌は知っているけれど、敵となるロボットを貫くドリルの感触や金属を削る耳障りな音は知らないのだ

彼女の優しい世界を壊してはいけないと思った

“壊したくない”と感じたのははじめてだった




そうやって、少しずつ小さな嘘を重ねながらもクラッシュははじめての友達とよべる彼女との時間を楽しんでいた

少女との時間が楽しすぎてクラッシュは僅かな少女の変化に気づけずにいた

終わりは、確実に迫っていた
















「ねぇ、お願いがあるんだ」


いつものように少女に会いに行ったクラッシュは彼女の言葉に目を瞬かせた



「なに?」


それまでも少女はクラッシュに お願い をした
それは一緒に歌を歌おう!とか、兄弟の話を詳しく教えて、とか、他愛のないものばかりだった




「あのね、こんなの自分勝手だしこんなこと頼まれたら迷惑だってこともわかっているんだけどね……」
「?」



ようやくクラッシュは気づいた
少女の様子がおかしいことを


「なあ、大丈夫か?具合悪いのか?」



聞きたくない
話を続けようとする少女の言葉を遮るようにクラッシュは言う



「やっぱり、隠せなかったね…ごめんね。本当はもっとはやくに言いたかったんだけど…きみとのお話が楽しくって、言えなかったんだ」


コアがうるさいくらい震えた





「いやだ……!いうな!」


声を荒げるクラッシュに対して少女はおだやかだった

クラッシュはわかってしまった

少女がどうなるかということを






「わたしね、あともう数時間で止まるの。今日きみがきてくれて本当に良かった…」



おだやかに笑う彼女の声にはノイズが混じっていた

ふとクラッシュのカメラアイに異常が発生した
目の前の少女の姿がぼやけた




「悲しんでくれてありがとう。わたしと話をしてくれてありがとう。わたしとマスターと弟の思い出の詰まったこの場所を壊さないでいてくれてありがとう。わたしと…友達になってくれてありがとう。」


きっと少女は笑っているだろう
クラッシュはこの時はじめて、人間と同じように『泣く』という機能を自らにつけたワイリーをうらんだ
少しでも長く少女の姿を見ていたいのに、カメラアイから流れる冷却水によってはっきり彼女を見ることが出来なかった




「わたしがとまったら、わたしごとこの場所を壊して欲しいんだ。」

「……いやだ!」



彼女の言葉にクラッシュは叫ぶ
まばたきをして、冷却水を流すと視界がさっきより明瞭になった

彼女は困ったように笑っていた




「博士なら…ワイリー博士ならきっとあんたを直せるよ!だから一緒に行こう!ワイリー博士は天才科学者だからぜったいあんたを助けてくれる!」


クラッシュの言葉に少女はふるふると首を横に振った


「わたしはね、本当にずうっと昔に作られたロボットなんだ。今までは研究所にエネルギーの蓄えがあったけど、それももう終わり。わたしのエネルギーは今ではもうこの世界になくなってしまったものなの。もし、きみのマスターがわたしを直してくれても、わたしのメモリーにはもうだいぶガタが来てるから…メモリーが消えてしまう可能性が高いんだ…そうしたら、マスターや弟との思い出も、きみとの時間も、全部忘れてしまう…わたしは、忘れたくないんだ………」

ノイズ混じりの声が震える
それまでおだやかに微笑んでいた表情が一変しクラッシュと同じように歪む



「忘れたくない……忘れたくないよ……!だから……!おねがい……」


少女の目からポロポロと雫がこぼれる


クラッシュは、ぎゅっと唇を引き結んだ

















(ふたつの涙とひとつの決意)





+++++++++++++
長々とすみません…

次で終わりにします。



フラッシュとクラッシュの部分と過保護メタルが書けたから満足です←

そんなメタルにちょっぴり引くのはきっと思春期がはじまったんだよね^^

そのうち、反抗期突入しちゃうんだZE☆
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