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(影鋼)
(シャドーとメタルがはじめて言葉を交わした時)











その夜は月の光が明るかった
シャドーは廃れた工場の屋上で一人物思いに耽っていた
いまや忘れ去られた廃工場に来る者などおらず、シャドーはよく一人でこの場所に来ていた








「珍しいな。ここに先客がいるとは……」

いきなり声が聞こえシャドーは内心驚きすぐにシャドーブレードを構える
声の主に目をやると、そこには紅い装甲のロボットがいた



「お前は……シャドーマンか。」



ブレードを構えるシャドーに対し紅いロボットは気にせず続ける



「お主…何奴……」

「DWN.009メタルマン。実際会うのは初めてだな。」



ブレードを構えられてるにもかかわらずメタルは気にしていない様子だ
相手に戦う意志が感じられぬことがわかり、シャドーはゆっくりとブレードを下ろした






「まさかこの場所を知っている奴が他にいるとはな。まぁ、俺のことは気にするな。俺もお前のことは気にしない。」

「……………。」


一方的にそう告げると、メタルはシャドーから少し距離をおいて座りこみ口元を覆っていたマスクを外す
そして言葉通り、シャドーのことなどそこにいないかのようにロボ桜と書かれた酒を飲み始めた



(なんだ、コイツは……)



そんなメタルを唖然とした様子で見つめるシャドー
気にするなと言う方が無理だ





「………お前も飲むか?」

シャドーの視線に気づいたのか、メタルが酒を差し出してくる
少し、戸惑いながらもシャドーはそれを受け取った











「いい月だな」

「……ああ」


ここに来た時には考えもしなかった
自分の兄弟機達ともこんな風に酒を飲み交わしたことがないのになぜ己は初対面の相手と酒を飲んでいるのだろう

隣を見れば酒により少し頬を赤く染めたメタルが月を見上げていた




(とても戦闘機には、見えないな……)



メタルの穏やかな目を見てシャドーはぼんやりと考える
己の中にインプットされたメタルマンのデータには、冷静沈着で時に冷酷なほど容赦なく任務を遂行するロボットという情報であったし、兄弟達がメタルマンについて話していたことを小耳に挟んだ際、その内容は賞賛や憧れの内容が多く、今、隣にいるロボットがその憧れの対象だといまいち実感が沸かなかった






「そういえば、お前は宇宙からやって来たそうだな。」

「ああ…。と言っても拙者にはその頃の記憶はござらんが…」


月を見上げながら何気なく言うメタルの言葉にシャドーは少し気が重くなる
そんな空気に気づいたのか、メタルは視線を月からシャドーに向ける




「気にしているのか?」

「……………。」


何と答えていいかわからずシャドーは黙り込む
ワイリーによって手を加えられる前の己の記憶のことなど、シャドーは考えたこともなかった
その必要はないと感じていたからだ


「記憶については……気にしてはござらん。だが……時々、ワイリー博士はなぜ拙者を起動させたのか、疑問に感じることはある…」

己の戦闘能力の高さは、それなりに自負している
しかしそれが己の存在理由になるのか、疑問に感じているのだ

己の兄弟機とは作られた過程も、物質も、理由も違う
そのことが常にシャドーにまとわりつき、未だに他の兄弟機に心を許せずにいた
兄弟達もそんなシャドーにどう接していいかわからず、腫れ物を扱うような空気が常にあった




(別に一人だろうが関係ござらんが)



兄弟達だって己のことを煩わしく感じているだろう
彼らにとって己こそが異質
だったら深くは関わるまい……シャドーはそう考えていた






「なあ、メタル殿。メタル殿は、何故己が作られたのか考えたことはあるか?」



ドクターワイリーが初めて作った純戦闘用ロボット
戦うことだけを目的に作られたロボットが何を思っているのか、シャドーは興味を抱いた




「そんなこと、考えるまでもない。」


メタルは何を言っているんだという視線をシャドーにむける


「何故俺が作られたか?そんなこと、博士が望まれたからに決まっているだろう。博士の為に戦う為に俺はいる。それが俺の存在理由だ。」


紅い瞳が真っ直ぐにシャドーを射抜く


「お前だって、博士が望まれたから今こうして動いているんだ。ならば迷うことは無いだろう。俺達ワイリーナンバーズは、博士の為に動けばいい。それが博士の望みだからな。」



そう言ってメタルは笑う
その笑みは自身に誇りをもっているものだった

月に照らされた迷いのないその紅い瞳を、シャドーは無意識に美しいと感じ、目を反らせられなかった








(あなたの紅に心奪われた)






++++++++++++++
真面目な影鋼も書いてみようかと……し…たんだ………orz

えっと、意外と書きにくかった。

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