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鋼の長兄とポッポーと次男を愛する腐れ女子
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(鋼泡)

(入れ替わりネタ注意)
















「1日だけ、入れ替わってみないか?」

何の前触れもなく大真面目にそう提案した兄に、流石の僕も呆気にとられた










(きみの見てるせかい)










「いいか!絶対に知らない奴に着いて行くんじゃないそ!あと繁華街とか、危なそうな場所には近づくなよ、なにかあったらやられる前に殺れ!それから…………」

「あー…もう…わかってるよ」



僕はうんざりした顔で僕を見る
目の前の僕は心底心配そうに眉をひそめている
僕にもこんな表情が出来たんだな、まぁしたくないけど…
そんな事を思いながら僕は僕を見下ろす
いつもより高い視界が新鮮だった

「だいたいさぁ、自分から言い出したことじゃない」

「それは…そうだが……」


ぐっと言葉を詰まらす僕
正確に言えば僕の体のメタルだ
メタルのいきなりの提案のせいで、僕とメタルは現在中身が入れ替わっている
僕らロボットにとって素体というのは入れ物のようなものだ
感情や、記憶というものはすべてコアに由来している
コアさえ壊れなければ僕らはどんなに大破しようとも修理出来るのと一緒で、中身を入れ替えるのは面倒だが可能ではある

フラッシュにちょっとお願いして(別に弱みを握って脅したわけじゃないよ、うん)僕らは無事、入れ替わった

メタルの体に入って感じたのは、陸上でも体が軽いと言うことだ
スムーズに歩いたり出来るのが新鮮で、ちょっとだけ嬉しかった
メタルはメタルで水の中での活動が新鮮なようで潜ったり浮かんだりと楽しそうだった
まぁ客観的に見ると僕がはしゃぎながら泳いでるみたいで嫌なんだけどね




「メタルも、あんまフラフラしないでよ」

「ああ、お前に迷惑がかかるようなことはしないさ」


そう言って別れたのが今朝

とりあえず外に出てみようと通路を歩いていたらクラッシュとクイックが前方からやってきた



「あっ!メタルおはよー!」

「どこか出掛けるのかよ?」



兄弟にメタルと呼ばれるのはなんだか変な感じがしたが僕達が入れ替わっているのを知っているのはフラッシュだけだ
そのフラッシュは徹夜で僕らの要求を呑んだせいで今頃部屋で爆睡してるだろう


「おはよう。クイック、クラッシュ。ちょっと出掛けるが、そんなに遅くならないうちに帰るから」

なるべく言葉を選んで発言する
別に兄弟達にバレても問題はないが、こういうのは黙っていた方が面白い
勘の鋭いエアーならまだしも単純なこの2人なら誤魔化せるだろう



「飯はどうすんだよ?」

「大丈夫だ。冷蔵庫の中に作り置きしておいたから」

メタルが


兄弟に関する事において、メタルに抜かりはない


「喧嘩しないでみんな仲良く食べるんだぞ」

「しねぇよ!うぜぇ…」


メタルが言いそうなウザイ一言を付け加えるとクイックは盛大に嫌そうな顔をする
僕、結構演技うまいのかも




「…………なんか、今日のメタルへんだ」

ポツリと呟いたクラッシュに一瞬コアが飛び跳ねる
クラッシュを見ればなんとも言えない疑いの眼差しを向けられた
あれ?なんかしくったかな?




「メタルが変なのはいつものことだろ!」

クイックの言葉に全面的に同意する
兄弟に対してメタルは常におかしい




「でも………」

「それよりとっとと飯行くぞ!」


クラッシュの言葉を遮りクイックは歩き出す
釈然としない表情のままクラッシュもクイックに続いて去っていった

僕はその2つの背中をぼんやりと見送った












外の世界は、いつも自分で歩くときよりも生き生きとして見えた
僕はいつも歩く事だけに必死で、周りを見る余裕なんてないからってこともあるけど
ただぶらぶらと歩いているだけで楽しいと思えた




「待って!」

そろそろ帰ろうかな
そう思っていた時だった
後ろから呼び止められ、腕を引かれる
振り返れば知らない女性が腕を掴んでいた

綺麗な部類に入るであろう表情は大袈裟に歪められていた


「やっと会えた…!ねぇどうして突然いなくなってしまったの?」

いなくなるも何も、僕はこの人のことなど知らない
まぁ、今、僕の体はメタルのものだし、多分メタルの悪い癖のお相手の一人なんだろう
ここ数年、めっきり少なくなったメタルの夜遊び
それこそ、僕が作られたばかりの頃は毎晩のように出歩いていたようだ




「あたしのこと愛してるって言ったじゃない!なのになんで…」

ああ、つまらない女だ
きっとこの女はメタルを愛してるわけではない
自分のつまらないプライドを守るため、こうやって過去のことに噛みついてくるんだろう
確かにそれなりに美人である
きっとメタルお決まりの「愛してる」を本気のものだと捉えたんだろうね
メタルは一晩、虚しさを埋められればそれでいいというのに
きっとこの女のことなんて覚えてもいないだろう



「ねえ!何か言ってよ!」

うるさい
きっとこの人は悲劇のヒロインを気取りたいだけ
メタルを悪者にして、自分の尻の軽さを棚に上げる
自信のくだらないプライドを必死に守ろうとしている馬鹿だと思った



「離してくれる?」


嫌悪感が込み上げて僕は乱暴に腕を振り払った


「キミみたいなのに、興味ないから」



それだけ言うと僕は女に背を向ける
女は一瞬呆然とした後、何かを喧しく騒ぎだしたが僕は振り返らない
口汚い罵声が追いかけてくるのが堪らなく不快だった














「ただいま」

城に戻るとバタバタとクラッシュが駆け寄ってきた


「おかえり!バブル!」

「あれ?バレちゃったの?」


今朝と違ってクラッシュの視線の中に疑いはない
メタルの体の僕をバブルと呼ぶあたり、恐らくフラッシュが話したか、先に戻ったメタルがバラしてしまったかだろう


「なあなあ!楽しかった?メタルの体!」

「うーん…まぁ、それなりにね」


ニコニコ笑うクラッシュに僕は苦笑する
確かに自由に歩けたり、楽しかったのは事実だ




「メタルももう帰ってきてるぞ」

「そっか、じゃあそろそろ元に戻ろうかなぁ」



クラッシュと一緒にラボに入ると僕の体のメタルが兄弟達に囲まれてオロオロしていた


「ちょっと…僕の体でそういう情けない顔しないでくれる?」

「バブル!」


縋るようにこちらを見るメタルに兄弟達は面白そうにニヤニヤ笑っている


「中身がメタルとは言え、貴重なもん見れたな」

今朝間抜けにも僕に騙されたクイックがニヤニヤとからかうように言う
その楽しげな瞳を軽く一瞥してから僕はふぅと息を吐いた




「メタルブレードってどれくらい切れるのかな?クイック、ちょっと実験台になってくれない?僕が思うに、いつもメタルって本気でブレード投げてないと思うんだよね」

「バ、バブル……!駄目駄目!メタルブレード、ほんと切れ味良いから!本気で投げて当たり所悪かったらいくらクイックでもティウるかもしれないから!」

「そう言われると益々やってみたくなっちゃうでしょ?フラッシュ!クイックの足を止めてね」

「なんで俺が……」

「あっ、じゃあフラッシュが僕の好奇心を解消してくれるんだ!いい弟を持ってお兄ちゃん幸せだよ」

「悪いな、クイック……成仏してくれ…」

「てめっ!!ハゲ!やめっ……!!」

「クイックー!!!!!」









意外と力の加減って難しいんだねぇ
ざっくりと壁に食い込んだメタルブレードを眺め僕はしみじみと呟いた









++++++++++++++++++
おまけ




「そう言えばさ、なんでメタルは僕と入れ替わろうと思ったの?」

元の体に戻った僕は、プールの中からメタルを見上げる
見慣れた視界にちょっとだけ安心した


「お前がいつも見ている世界を見てみたかったんだ」


そうやって笑う紅い瞳の優しさに僕は優越感を覚える
きっと、あの女はメタルのこの優しさを知らない

「あと……害虫駆除だな」

「害虫?」


ニコニコと笑うメタルの瞳から優しさが消えた



「出来る限り叩きのめしておいたからしばらくはわいてこないと思うぞ。まあ多少手間取ったが……」

「あー……うん。なんとなく心あたりはあるよ…ありがと…」


いつも僕にしつこくちょっかいを出してくる隻眼のロボットを思い出す
まぁ同情なんてしないけど、余計しつこくなるんじゃないかな…彼の性格からして……

僕は今後のことを想像し、こっそりため息をもらした










++++++++++++++++++++
誰もが一度は考えると思う入れ替わりネタ
MBにしたのは私の趣味です。
てか、うちのパヤオはなんで馬鹿なんだろう…
かっこいいパヤオが書きたいです\(^o^)/

途中まで真面目に書いてたのに最終的にギャグになって私、涙目\(^o^)/
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